【親なきあと対策 第16回】 実際によくある相談事例から考える「親なきあと対策」 ~「もっと早く準備しておけば…」と後悔しないために~
これまでの連載では、遺言書、家族信託、成年後見制度、住まい、65歳の壁など、「親なきあと対策」に必要な制度についてご紹介してきました。
今回は、事例をもとに、「親なきあと対策」の大切さについて考えてみたいと思います。
事例1 突然の入院で慌てたご家族
80代の母親と、知的障害のある50代の息子さんが一緒に暮らしていました。
お母様は、「自分が元気なうちは大丈夫」と考え、お子さんの生活のことはすべて一人で管理していました。
ある日、お母様が突然入院することになりました。
すると、ご家族は次のようなことで困ってしまいました。
・どこの事業所を利用しているのかわからない。
・障害年金の振込口座がわからない。
・通帳や印鑑の保管場所がわからない。
・服用している薬がわからない。
・緊急時の連絡先がわからない。
「情報を整理しておけばよかった」との後悔を、強く感じた事例です。
事例2 遺言書があったことでスムーズに相続できたケース
父親が亡くなり、障害のある長男と、長女・次女の3人が相続人となりました。
しかし、お父様は公正証書遺言を作成しており、誰がどの財産を取得するのかが明確に決められていました。
そのため、大きな争いもなく、相続手続きを進めることができました。
さらに、遺言執行者も指定されていたため、ご家族の負担も軽減されました。
父が元気なうちに準備してくれていて本当に助かった事例です。
事例3 グループホームを体験していたことで安心につながったケース
親御さんは、「将来のために」と、お子さんが50代の頃からグループホームの見学や体験利用を始めていました。
最初は不安そうだったお子さんも、何度か体験するうちに少しずつ環境に慣れていきました。
数年後、親御さんの体調が悪くなり、一緒に暮らすことが難しくなりましたが、お子さんは慣れ親しんだグループホームへスムーズに入居することができました。
元気なうちに準備しておいてよかったと実感した事例です。
共通していたこと
これらの事例には、共通点があります。
それは、
「親御さんが元気なうちに準備を始めたかどうか」です。
特別なことをしていたわけではありません。
・家族で話し合う。
・遺言書を作る。
・親なきあとノートをまとめる。
・将来の住まいを考える。
・支援者とつながる。
このような一つひとつの積み重ねが、大きな安心につながっていました。
「まだ早い」ではなく、「今が始めどき」
「親なきあと」の準備というと、難しく感じるかもしれません。
しかし、最初からすべてを準備する必要はありません。
例えば、
・親なきあとノートを書き始める。
・通帳や重要書類の保管場所を整理する。
・利用している福祉サービスを書き出してみる。
・将来について家族で話し合ってみる。
こうした小さな一歩が、大きな安心につながります。
専門家に相談することも大切です
親なきあと対策には、
・相続
・遺言
・家族信託
・成年後見制度
・福祉制度
・税金
・不動産
など、さまざまな分野が関わります。
「何から始めればよいかわからない。」
そのようなときは、一人で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。
ご家庭の状況に合わせた準備を進めることで、不安を安心へと変えることができます。
まとめ
今回ご紹介した事例に共通していたのは、「早めの準備」が、ご本人にもご家族にも安心をもたらしていたことです。
「親なきあと」は、いつか必ず考えなければならない問題です。
だからこそ、元気な今だからこそできることがあります。
できることから一つずつ準備を始めることが、お子さんの将来を守る大きな力になります。
次回予告
第17回「今日から始める親なきあと対策チェックリスト」
「結局、何から始めればいいの?」
そんな疑問をお持ちの方のために、次回は今日から実践できるチェックリストをご紹介します。
一つずつ確認しながら、ご家庭に合った「親なきあと対策」を始めていきましょう。
