【親なきあと対策 第12回】 遺言制度はどう変わる? ~「保管証書遺言」の創設など、より利用しやすい制度へ~
これまでの連載では、遺言書の重要性についてご紹介してきました。
特に、障害のあるお子さんがいるご家庭では、遺言書は将来への安心につながる大切な備えです。
一方で、
「自筆証書遺言は自分で書かなければならない。」
「公正証書遺言は公証役場まで行く必要がある。」
「もっと利用しやすい制度にならないのだろうか。」
という声も少なくありません。
こうした社会の変化や高齢化を受けて、現在、遺言制度の見直しが進められています。
今回は、その中でも注目されている「保管証書遺言(仮称)」を中心に、今後の制度改正の方向性についてご紹介します。
現在の遺言制度
現在、一般的に利用されている遺言書は、次の2種類です。
自筆証書遺言
ご本人が全文を自筆で作成する遺言です。
費用を抑えられる一方で、法律で定められた方式を守らなければ無効となる可能性があります。
また、紛失や改ざんを防ぐため、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することもできます。
公正証書遺言
公証人が作成する遺言です。
法律に沿って作成されるため安心感が高く、原本は公証役場で保管されます。
その反面、公証役場へ出向く必要があり、証人も必要になるなど、一定の手続きや費用がかかります。
新しい制度「保管証書遺言」が検討されています
現在、法制審議会では、
「保管証書遺言(仮称)」
という新しい遺言制度が検討されています。
これは、自筆証書遺言と公正証書遺言、それぞれの長所を取り入れた新しい制度を目指すものです。
本人が全文を書かなくてもよくなる可能性
現在の自筆証書遺言では、原則として本文を自分で書かなければなりません。
しかし、新しい制度では、
本人以外の人が文章を作成したり、パソコンなどで作成したりすることも認められる方向で進められています。
高齢になり、
「字を書くのが大変になった。」
「手が震えて長い文章を書けない。」
という方にとって、大きな負担軽減になることが期待されています。
最も大切なのは「本人の意思」
「本人が書かないのであれば、本当に本人の遺言なの?」
そう思われる方もいらっしゃるでしょう。
そこで新しい制度では、
本人が遺言の内容を読み上げるなどして、その内容が自分の真意であることを確認する方法が検討されています。
つまり、
「誰が書いたか」
よりも、
「本人の意思であることが確実に確認できるか」
が重視される制度へ変わろうとしているのです。
これは、高齢化社会に対応した大きな制度改革といえるでしょう。
法務局で安全に保管
新しい制度では、
遺言書は法務局などの公的機関で保管されることが想定されています。
これにより、
・紛失
・改ざん
・偽造
などのリスクを大きく減らすことが期待されています。
また、現在の自筆証書遺言書保管制度と同様に、安心して保管できる制度になることが期待されています。
デジタル技術も活用へ
今回の制度見直しでは、
デジタル技術の活用も大きなテーマとなっています。
本人確認や保管方法などにデジタル技術を取り入れることで、
より安全で利用しやすい制度を目指しています。
将来的には、遺言作成や保管の手続きも、より便利になる可能性があります。
障害のあるお子さんがいるご家庭へのメリット
障害のあるお子さんがいるご家庭では、
「遺言書は必要だと分かっていても、作成が難しい。」
という方も少なくありません。
新しい制度が実現すれば、
身体的な理由で文字を書くことが難しい方でも利用しやすくなることが期待されます。
また、
本人の意思確認を重視した制度になることで、
安心して遺言を残せる方も増えるでしょう。
親御さんが元気なうちに、自分の思いを確実に残せる制度として期待されています。
ここで注意していただきたいのは、
保管証書遺言は、現時点ではまだ正式に始まっている制度ではありません。
制度の内容は、今後の法改正によって変更される可能性があります。
そのため、
「新しい制度が始まるまで待とう。」と考えるのではなく、
現在利用できる
・公正証書遺言
・自筆証書遺言(法務局保管制度を含む)
を活用して準備を進めることが大切です。
どのような制度になっても変わらないものがあります。
それは、
「障害のある子どもが安心して暮らしてほしい。」
という親御さんの願いです。
制度は、その思いを実現するための手段です。
だからこそ、制度の変化にも関心を持ちながら、今できる準備を少しずつ始めることが大切なのです。
まとめ
遺言制度は、現在、「保管証書遺言」の創設など、より利用しやすい制度への見直しが進められています。
本人が自筆しなくても作成できる仕組みや、本人の意思確認を重視した新しい制度は、多くの方にとって利用しやすいものになると期待されています。
親なきあと対策では、「制度が変わってから」ではなく、「今できることから始める」ことが何よりも重要です。
制度の動向にも目を向けながら、ご家庭に合った準備を進めていきましょう。
次回予告
第13回「障害年金・福祉サービスをもう一度確認しましょう」
将来に備えるためには、遺言書だけでは十分ではありません。現在利用できる障害年金や福祉サービスを正しく理解し、必要な支援を継続して受けられるよう準備しておくことも大切です。次回は、親御さんが確認しておきたい制度や見直しのポイントについて解説します。
