【親なきあと対策 第15回】 「65歳の壁」を知っていますか? ~障害福祉サービスから介護保険へ 制度が変わる大切な節目~

障害のあるお子さんを持つ親御さんにとって、「親なきあと」と同じくらい知っておいていただきたいテーマがあります。
それが、「65歳の壁」です。
65歳を迎えて初めて制度の変更を知り、戸惑われるご家族も少なくありません。
今回は、「65歳の壁」とは何か、そして今からどのような準備をしておけばよいのかを、わかりやすくご説明します。

「65歳の壁」とは?

障害のある方が65歳になると、障害福祉サービスの利用に加えて、介護保険制度との関係を考えなければならなくなります。
介護保険制度では、65歳以上で要介護認定などを受けた方が介護サービスを利用できます。
そして、障害福祉サービスと介護保険に同じような内容のサービスがある場合は、原則として介護保険が優先されます。
この制度の切り替わりが、「65歳の壁」と呼ばれる理由です。

「障害福祉サービスが使えなくなる」ということではありません

「65歳になったら障害福祉サービスは受けられなくなる。」
そのように誤解されることがありますが、それは正しくありません。
介護保険に同じ内容のサービスがない場合や、障害福祉サービスならではの支援が必要な場合には、引き続き障害福祉サービスを利用できることがあります。
つまり、大切なのは、
「介護保険が優先される」という原則を理解したうえで、自分に必要なサービスを確認することです。

利用する制度が変わることで負担が変わることも

介護保険では、所得に応じてサービス利用料の一定割合(原則1~3割)を自己負担します。
一方、障害福祉サービスは、所得区分などに応じて負担額が決められています。
そのため、同じような支援を受けていても、利用者負担が変わることがあります。
また、サービスの内容や利用方法が変わる場合もあるため、事前に確認しておくことが安心につながります。

65歳になる前に確認しておきたいこと

65歳が近づいてきたら、次のようなことを確認しておきましょう。
・現在利用している障害福祉サービスは何か。
・介護保険で利用できるサービスはあるか。
・今後も障害福祉サービスを継続して利用できるものはあるか。
・自己負担額は変わるのか。
・困ったときの相談先はどこか。
これらを早めに整理しておくことで、制度の切り替えにも落ち着いて対応できます。

相談支援専門員やケアマネジャーと連携しましょう

制度が切り替わる時期には、さまざまな専門職が関わります。
障害福祉サービスでは相談支援専門員、介護保険ではケアマネジャーが中心となって支援を行います。
それぞれの役割を理解し、情報を共有しながら準備を進めることが大切です。
また、市区町村の障害福祉担当窓口や地域包括支援センターにも相談できます。
一人で悩まず、早めに相談することが安心への第一歩です。

親御さん自身の将来も考えましょう

「65歳の壁」は、お子さんだけの問題ではありません。
親御さんも年齢を重ねることで、体力や健康状態に変化が生じます。
そのため、
・自分が支援できなくなったとき、お子さんは誰が支えるのか。
・将来どこで暮らすのか。
・生活費は足りるのか。
・困ったときに相談できる人はいるのか。
こうしたことを、ご家族や支援者と話し合っておくことが大切です。

「65歳」は準備を始める目安です

「65歳になったら考えよう」では遅い場合があります。
グループホームの見学や体験利用、利用しているサービスの見直し、将来の生活設計などは、60歳頃から少しずつ準備を始めることをおすすめします。
早めに準備をしておけば、制度が変わるときも慌てずに対応できます。

「親なきあとノート」に記録しておきましょう

制度やサービスの内容は、親御さんだけが知っていては十分ではありません。
現在利用しているサービスや相談先、担当者の連絡先などを「親なきあとノート」にまとめておけば、ご家族や支援者へスムーズに引き継ぐことができます。
制度は変わることがありますので、定期的に見直し、最新の情報に更新しておくことも大切です。

まとめ

「65歳の壁」とは、障害福祉サービスと介護保険の関係が大きく変わる節目のことです。
制度を正しく理解し、早めに準備を始めることで、不安を減らし、お子さんが必要な支援を受け続けられる環境を整えることができます。
「親なきあと」の備えは、遺言書や財産管理だけではありません。
生活を支える制度を知り、将来を見据えて準備することも、大切な親なきあと対策の一つです。

次回予告
第16回「実際によくある相談事例から学ぶ親なきあと対策」
「何から始めればよいかわからない」「うちの場合はどうすればいいのだろう」
そんな親御さんの疑問にお応えするため、次回は実際によくある相談事例をもとに、準備の進め方や考え方をわかりやすくご紹介します。