【親なきあと対策 第10回】 成年後見制度とは ~本人の権利と生活を守るための大切な制度~

前回は、「家族信託」についてご紹介しました。
家族信託は、親御さんが元気なうちに財産管理の仕組みを作ることができる制度です。
では、障害のあるお子さんが契約やお金の管理を一人で行うことが難しくなった場合、どのような制度が利用できるのでしょうか。
その代表的な制度が「成年後見制度」です。
「聞いたことはあるけれど、よく分からない。」
「家族信託とは何が違うの?」
このような疑問を持たれる方も多いでしょう。
今回は、成年後見制度について、できるだけわかりやすくご説明します。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより、契約や財産管理を一人で行うことが難しい方を法律的に支援する制度です。
例えば、
・福祉サービスを利用する契約を結ぶ
・施設へ入所する契約をする
・預貯金を管理する
・公共料金などの支払いを行う
・不利益な契約を取り消す
このようなことを、本人に代わって、あるいは本人を支援しながら行います。
成年後見制度の目的は、本人の財産を守ることだけではなく、本人の権利や生活を守ることにあります。

成年後見制度には2つの種類があります

成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2つがあります。

法定後見

すでに判断能力が十分でない場合に、家庭裁判所が後見人などを選任する制度です。
例えば、
・知的障害のある方
・精神障害のある方
・認知症になった高齢者
などが対象になります。
後見人には、ご家族が選ばれることもありますが、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれるケースも少なくありません。

任意後見

将来、判断能力が低下した場合に備えて、元気なうちに信頼できる人と契約を結んでおく制度です。
実際に任意後見が始まるのは、判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後になります。
親御さん自身の認知症対策として利用されることが多い制度です。

障害のあるお子さんがいるご家庭では、どんな場面で利用するのでしょうか

例えば、
・相続手続きが必要になった
・遺産分割協議に参加しなければならない
・不動産を売却する必要がある
・福祉サービスの契約を更新する
・施設への入所契約を結ぶ
このような場面で、ご本人だけでは判断が難しい場合、成年後見制度の利用が必要になることがあります。
特に、相続では遺産分割協議が必要になることがあります。
遺言書がなく、障害のあるお子さんが相続人である場合には、成年後見人の選任が必要になるケースもあります。
そのため、第7回でご紹介した「遺言書」が重要になるのです。

成年後見人は何でもできるのでしょうか

成年後見人は、ご本人を支援する大切な役割を担いますが、何でも自由にできるわけではありません。
成年後見制度は、本人の利益を守るための制度です。
そのため、
・本人の財産を自由に使うことはできません。
・親族のために財産を使うこともできません。
・財産は本人のために適切に管理しなければなりません。
また、大きな財産処分などについては、家庭裁判所の許可が必要になる場合もあります。

家族信託との違い

前回ご紹介した家族信託と混同されることがありますが、目的が異なります。
家族信託は、主に財産管理の仕組みを作る制度です。
一方、成年後見制度は、本人の生活や権利を守る制度です。
例えば、
・福祉サービスの契約
・施設への入所契約
・悪質商法への対応
などは、成年後見制度が役立つ場面です。

つまり、
家族信託は「財産管理」が中心、
成年後見制度は「本人の権利を守ること」が中心、
と考えると理解しやすいと思います。

成年後見制度にも知っておきたい点があります

成年後見制度は、とても重要な制度ですが、利用する前に知っておきたい点もあります。
例えば、
・一度利用すると、原則として途中でやめることはできません。
・専門職が後見人に選ばれた場合には、継続的な報酬が必要になることがあります。
・財産管理には一定の制約があります。
そのため、「とりあえず成年後見制度を利用しよう」と考えるのではなく、ご家庭の状況に合っているかを十分検討することが大切です。

制度を組み合わせることが大切です

親なきあと対策では、
・遺言書
・親なきあとノート
・家族信託
・成年後見制度
・生命保険
など、それぞれ役割が異なります。
一つの制度ですべてを解決することはできません。
例えば、
親御さんの認知症対策には家族信託、
お子さんの生活を守るためには成年後見制度、
財産を引き継ぐためには遺言書、
というように組み合わせることで、より安心できる親なきあと対策になります。

一人で悩まず、早めに相談しましょう

成年後見制度は、一度利用すると長く関わる制度です。
だからこそ、
「今、本当に必要なのか。」
「他の制度の方が適しているのではないか。」
を十分に検討することが大切です。
ご家庭の状況や、お子さんの障害の程度、財産の内容などによって、最適な方法は異なります。
専門家に相談しながら、ご家庭に合った方法を選びましょう。

まとめ

成年後見制度は、判断能力が十分でない方の生活と権利を守るための大切な制度です。
障害のあるお子さんが安心して生活を続けるためにも、知っておきたい制度の一つといえるでしょう。
ただし、成年後見制度にもメリットと注意点があります。
大切なのは、制度そのものではなく、お子さんとご家族にとって最適な方法を選ぶことです。
親御さんが元気な今だからこそ、将来を見据えた準備を少しずつ始めていきましょう。

次回予告
第11回「成年後見制度はどう変わる?~利用しやすい制度へ向けた見直しが進んでいます~」です。
成年後見制度は、今後どのように変わっていくのか、その方向性を確認していきましょう。