【親なきあと対策 第6回】 財産をどう残すか ~「残すこと」よりも「安心して使えること」が大切です~

これまでは、「親なきあと問題」とは何か、そして「親なきあとノート」の大切さについてお話ししてきました。
今回は、多くの親御さんが気にされる「財産の残し方」について考えてみたいと思います。
親御さんの中には、
「少しでも多くのお金を残してあげたい。」
「兄弟姉妹に迷惑をかけたくない。」
「財産が少ないので、何もできないのではないか。」
という思いをおもちの方がおられます。
しかし、親なきあと対策で本当に大切なのは、「どれだけ財産を残すか」ではありません。
残した財産を、お子さんが安心して生活のために活用できるように準備しておくことなのです。

財産が多い・少ないはあまり関係ありません

「うちは財産がほとんどないから、対策する必要はありません。
そうおっしゃる親御さんもいらっしゃいます。
しかし、財産が多いご家庭だけが準備をするものではありません。
例えば、
・預貯金が数百万円ある
・持ち家がある
・生命保険に加入している
・障害年金を受給している
これらは、お子さんの生活を支える大切な財産です。
一方で、財産が多いから安心というわけでもありません。
「誰が管理するのか」「どのように使うのか」が決まっていなければ、お子さんのために十分活かされないこともあります。

「財産を残す」と「使える」は違います

例えば、親御さんが1,000万円の預金を残したとします。
これだけ聞くと、「安心できる」と思われるかもしれません。
しかし、
・お子さん自身で預金を管理できるでしょうか。
・必要なときに適切にお金を使えるでしょうか。
・詐欺や悪質商法の被害に遭う心配はないでしょうか。
・障害の状況によっては、お金の管理が難しい場合があります。
そのため、「財産を残した」という事実だけでは十分とはいえません。
安心して生活のために使える仕組みを考えることが重要です。

財産にはどのようなものがあるのでしょうか

財産というと預貯金を思い浮かべる方が多いですが、実際にはさまざまなものがあります。
例えば、
・預貯金
・不動産(土地・建物・マンション)
・生命保険株式や投資信託
・自動車
・貴金属
・現金
・その他の資産
まずは、「どのような財産があるのか」を整理してみましょう。
通帳や保険証券、不動産の権利証(登記識別情報通知)などの保管場所も、家族が分かるようにしておくことが大切です。

生活費はどれくらい必要なのか

財産を残すことだけを考えるのではなく、お子さんが将来どのような生活を送るのかを考えることも重要です。
例えば、
・グループホームで生活する場合
・一人暮らしをする場合
・施設へ入所する場合
では、必要となる生活費が異なります。

また、
・家賃
・食費
・光熱費
・医療費
・趣味や余暇活動
・日用品
など、毎月どの程度のお金が必要になるのかを大まかに把握しておくことで、「どのくらいの財産があれば安心なのか」を考えやすくなります。

生命保険も大切な備えになります

生命保険は、親御さんに万が一のことがあったとき、お子さんへまとまった資金を残す方法の一つです。
また、受取人を誰にするのかによって、活用方法も変わります。
保険の内容によっては、相続対策として役立つ場合もあります。
現在加入している保険があれば、一度内容を確認し、「親なきあと」の視点で見直してみることをおすすめします。

遺言書が必要になることもあります

財産をどのように残すかを考える際には、遺言書が重要な役割を果たします。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、障害のあるお子さんが相続人である場合や、兄弟姉妹に一定の役割をお願いしたい場合などは、親御さんの思いどおりに進まないこともあります。
遺言書を作成しておくことで、
・誰に何を相続させるのか
・どのような思いで財産を残すのか
を明確にすることができます。
なお、遺言書には法律上の決まりがありますので、作成する際には専門家へ相談されることをおすすめします。

ご家庭によって適した方法は異なります

親なきあと対策には、「これが正解」という方法はありません。
例えば、
・遺言書だけで十分なご家庭
・家族信託を利用した方がよいご家庭
・成年後見制度も視野に入れた方がよいご家庭
・生命保険を活用すると安心できるご家庭
など、ご家庭の状況によって必要な対策は異なります。
財産の内容だけでなく、お子さんの障害の状況や家族構成も考慮しながら、一緒に考えていくことが大切です。

「いくら残すか」より「どう残すか」

親御さんの多くは、「少しでも多く残してあげたい」と考えられます。
もちろん、そのお気持ちはとても大切です。
しかし、それ以上に重要なのは、「残した財産がお子さんの生活を支え、安心につながるようにすること」です。
そのためには、財産を整理し、適切な方法で引き継ぐ準備をしておくことが欠かせません。
親御さんが元気な今だからこそ、落ち着いて将来を考え、ご家庭に合った方法を選ぶことができます。

まとめ

財産は、多ければ安心というものではありません。
大切なのは、お子さんが将来困ることなく、その財産を生活のために活用できるよう準備しておくことです。
まずは、ご家庭の財産を整理し、「誰に」「何を」「どのように」残すのかを考えることから始めてみましょう。
それが、お子さんの将来の安心につながる大きな一歩となります。

次回予告
第7回「遺言書でできること ~親の思いを確実に伝えるために~」
「遺言書は財産の多い人だけが作るもの」と思っていませんか。
実は、障害のあるお子さんがいるご家庭では、遺言書は財産の額に関係なく重要な役割を果たします。
次回は、遺言書でできることや、親なきあと対策における遺言書の重要性について、わかりやすくご紹介します。