【親なきあと対策 第5回】 「親なきあとノート」を作る意味 ~「もしもの時」に、お子さんを守る大切な一冊~
これまでの連載では、「親なきあと問題」とは何か、そして早めの準備がなぜ大切なのかについてお伝えしてきました。
「何から始めればいいのでしょうか。
ご相談を受ける中で、最も多くいただくご質問の一つです。
もちろん、ご家庭によって必要な準備は異なりますが、まずおすすめしているのが「親なきあとノート」を作ることです。
遺言書や成年後見制度、家族信託などの制度も大切ですが、それらだけでは伝えきれない日常生活の情報があります。
その情報をまとめておくのが、「親なきあとノート」です。
「親なきあとノート」とは?
「親なきあとノート」とは、障害のあるお子さんが安心して生活を続けられるように、ご家族が必要な情報をまとめておくノートです。
法律で決められた書式はありません。
市販のノートを利用しても構いませんし、ご自身で作成しても問題ありません。
大切なのは、「万が一のときに、支援する人が困らないように情報を残しておくこと」です。
なぜ必要なのでしょうか?
親御さんは、お子さんのことを一番よく知っています。
しかし、その情報は親御さんの頭の中だけにあることが少なくありません。
例えば、
・好きな食べ物や苦手な食べ物
・一日の生活リズム
・苦手なことや配慮してほしいこと
・パニックになったときの対応方法
・よく使う言葉やコミュニケーションの取り方
・通院先や服用している薬
・利用している福祉サービス
これらは、お子さんを支援するうえで非常に重要な情報です。
しかし、親御さんが急に入院したり、認知症になったり、亡くなられたりした場合、この情報が誰にも伝わっていなければ、ご家族や支援者は大変困ってしまいます。
「親なきあとノート」は、そのような事態を防ぐための大切な備えなのです。
ノートにはどんなことを書けばよいのでしょうか?
ご家庭によって内容は異なりますが、例えば次のような項目を書いておくと役立ちます。
基本情報
・氏名・生年月日
・マイナンバーの保管場所
・健康保険証・受給者証などの保管場所
医療について
・かかりつけ医
・持病
・服薬している薬
・アレルギー
・緊急時の対応方法
福祉サービス
・利用している事業所
・相談支援専門員
・ヘルパーの方の事業所
・グループホーム・・日中の活動先
お金について
・年金
・預貯金の金融機関
・公共料金の支払い方法
・保険の加入状況
家族・親族
・緊急連絡先
・親族との関係
・頼りになる人
日常生活
・一日の過ごし方
・好きなこと
・苦手なこと
・コミュニケーションで気を付けてほしいこと
こうした情報があるだけで、ご本人を支える方の負担は大きく軽減されます。
一度作ったら終わりではありません
「親なきあとノート」は、一度作成したら完成というものではありません。
例えば、
・通院先が変わった
・薬が変更になった
・福祉サービスを利用し始めた
・担当の相談支援専門員が変わった
・新しいグループホームへ入居した
このような変化があれば、その都度更新することが大切です。
年に一度、お誕生日や年度替わりなどに見直す習慣をつけるとよいと思います。
親御さんの「思い」も残しておきましょう
「親なきあとノート」は、情報を書くだけのノートではありません。
例えば、
・この子のこんなところを大切にしてほしい
・こんな生活を送ってほしい
・困ったときには、無理をせず周囲に相談してほしい
といった親御さんの思いを書き残しておくことも、とても大切です。
数字や制度だけでは伝わらない「親の願い」は、お子さんを支える方々にとって大きな手がかりになります。
「親なきあとノート」は、家族への思いやりでもあります
親御さんは、「子どものために」と思ってノートを作成されます。
しかし実は、ご兄弟や親族、支援者にとっても、大きな助けになります。
親御さんしか知らなかった情報が整理されていれば、いざという時でも落ち着いて対応することができます。
「何を書けばいいのかわからないから、後回しにしている。」
そのような方も多くいらっしゃいますが、最初から完璧なノートを作る必要はありません。
まずは書けるところから始めて、少しずつ内容を充実させていけば十分です。
当事務所でも「親なきあとノート」をご用意しています
私は、障害のあるお子さんを持つ親御さんからのご相談や、福祉施設での講演を通じて、「本当に必要な情報を一冊にまとめられるノートがあれば」という思いから、「親なきあとノート」を作成しました。
医療や福祉サービス、財産、緊急連絡先、ご本人の特性など、実際のご相談で「これは記録しておいた方がよい」と感じた項目を盛り込んでいます。
ご希望の方には、Word版の「親なきあとノート」のデータを無料でお送りしています。
ご自身で入力・編集できますので、ご家庭の状況に合わせて内容を追加・変更したり、更新したりしやすいのが特徴です。
ご興味のある方は、メールフォームからお気軽にご連絡ください。
まとめ
親なきあと対策は、特別なことから始める必要はありません。
まずは、お子さんのことを「記録に残す」ことが第一歩です。
「親なきあとノート」は、お子さんの生活を支えるための情報だけでなく、親御さんの思いを未来へつなぐ大切な一冊でもあります。
今日から少しずつ書き始めることが、将来の大きな安心につながるのではないかと思います。
次回予告
第6回「財産をどう残すか ~『残す』から『活かす』という考え方へ~」
「財産は子どものために残したい。」
そう考える親御さんは多くいらっしゃいます。しかし、大切なのは「いくら残すか」だけではありません。
次回は、預貯金や不動産、生命保険などをどのように活用し、お子さんの将来の安心につなげていくのかを、わかりやすく解説します。
