【親なきあと対策 第2回】 親が元気なうちに準備を始める理由 ~「まだ早い」が、一番もったいないかもしれません~

前回は、「親なきあと問題」は親御さんが亡くなった後だけではなく、親御さんの高齢化や体調の変化によって始まる問題であることをご紹介しました。
では、なぜ「親が元気なうち」に準備を始めることが大切なのでしょうか。
多くの方は、
「まだ元気だから大丈夫。」
「もう少し年を取ってから考えよう。」
「今は仕事や介護で忙しく、それどころではない。」
と思われるかもしれません。
しかし、親なきあと対策は、「何かあってから」ではなく、
「何もない今」だからこそ進められることがたくさんあります。

「その日」は突然やってくることがあります

人生には、予想できない出来事が起こることがあります。
例えば、
 ・病気で突然入院した
 ・転倒して骨折し、長期間の入院やリハビリが必要になった
 ・脳梗塞などで判断能力が低下した
 ・認知症と診断された

このようなことは、決して珍しい話ではありません。
昨日まで元気だった方が、今日からこれまでどおりの生活を送れなくなることもあります。
もしそのとき、お子さんの生活を支える準備が何もできていなかったら、ご家族は限られた時間の中で、多くの判断や手続きをしなければならなくなります。
「もっと早く準備しておけばよかった。」
これは、実際の相談現場でもよく耳にする言葉です。

親しか知らないことが意外と多い

親御さんは、お子さんのことを一番よく理解しています。
しかし、その情報が親御さんの頭の中だけにあるケースは少なくありません。
例えば、
 ・どこの病院に通っているのか
 ・どの薬を服用しているのか
 ・苦手なことや配慮してほしいこと
 ・利用している福祉サービス
 ・担当の相談支援専門員
 ・通帳や印鑑の保管場所
 ・毎月の生活費や支払いの内容

こうした情報は、ご家族や支援者にとって、とても大切なものです。
しかし、何も記録されていなければ、親御さんが急に入院したり判断が難しくなったりした際に、周囲は何から手を付けてよいのかわからなくなってしまいます。
だからこそ、元気なうちに情報を整理し、家族や支援者と共有しておくことが重要です。

判断できるうちしかできないことがあります

親なきあと対策には、親御さんご本人の意思が大切になるものがたくさんあります。
例えば、遺言書を作成する財産をどのように残すか決める家族信託を利用する任意後見契約を結ぶ生命保険の受取人を見直すこれらは、十分な判断能力があることが前提となります。
もし認知症などで判断能力が低下してしまうと、希望していた対策が取れなくなる場合があります。
「もっと早く考えていればできたのに」という状況にならないよう、元気なうちから検討を始めることが大切です。

家族で話し合えるのも「今」だから

親なきあと対策は、一人で抱え込むものではありません。
兄弟姉妹や親族、必要に応じて支援者と話し合いながら進めることが大切です。
例えば、
「将来は誰が生活を見守るのか。」
「どこで暮らすことを希望しているのか。」
「財産はどのように残すのか。」
「困ったときは誰に相談するのか。」
こうしたことは、時間に余裕があるときであれば、落ち着いて話し合うことができます。
しかし、親御さんが入院したり、急に体調を崩したりしてからでは、
冷静に話し合う時間を確保することが難しくなることもあります。
元気な今だからこそ、ご家族全員で将来について考える良い機会になります。

準備は一度に終わらせる必要はありません

「対策を始めたいけれど、何から手を付ければよいかわからない。」
そのように感じる方も多いでしょう。
でも、心配はいりません。
親なきあと対策は、一日で完成させるものではありません。
まずは、
 ・お子さんの生活を見直す
 ・財産を整理してみる
 ・家族と話し合う
 ・「親なきあとノート」を書き始める
そんな小さな一歩から始めれば十分です。
少しずつ準備を積み重ねることで、将来への安心は確実に大きくなっていきます。

「まだ早い」ではなく、「今がちょうどいい」

親御さんが元気で、お子さんも安定した生活を送っている今こそ、将来を考える絶好のタイミングです。
何も起きていないからこそ、落ち着いて考え、選択肢を比較し、ご家族に合った方法を選ぶことができます。
親なきあと対策は、「もしものため」の準備であると同時に、今の生活を安心して続けるための準備でもあります。
将来の不安を一人で抱え続けるのではなく、一つひとつ準備を進めていくことが、ご本人とご家族の安心につながります。

次回予告第3回「障害のある子が将来困ることとは」
親御さんが支えられなくなったとき、お子さんはどのような場面で困るのでしょうか。
次回は、「お金」「住まい」「医療」「福祉サービス」「契約」など、日常生活の中で起こりやすい課題を具体例とともにわかりやすく解説します。