【成年後見シリーズ第3回】子どもがいない夫婦の将来 ― 任意後見という備え

事例

Cさん(75歳)とDさん(73歳)は、長年夫婦二人で暮らしています。
子どもはいませんが、これまで特に大きな問題もなく、穏やかな生活を送ってきました。

最近、友人が認知症になり、様々な手続きができなくなったという話を聞きました。

その友人の場合、配偶者が高齢で手続きが難しかったため、家庭裁判所に申し立てをして成年後見人が選ばれることになりました。

その話を聞いたCさん夫婦は、次のような不安を感じるようになりました。

「もしどちらかが認知症になったらどうなるのだろう」

「子どもがいないので、将来の手続きを頼める人がいないのではないか」

特に気になっているのは、

・介護サービスの契約
・施設入所の手続き
・銀行手続き
・自宅の管理

などです。

問題になりやすいポイント

夫婦の場合、「配偶者がいるから大丈夫」

と思われることが多いのですが、実際には注意が必要です。

たとえば、夫が認知症になった場合でも、
妻が夫の銀行口座を自由に使うことはできません。

また、

・介護施設の契約
・不動産の売却
・大きな財産管理

などの重要な手続きでは、本人の判断能力が必要になります。

もし判断能力が低下してしまうと、
配偶者であっても自由に手続きをすることができなくなります。

その場合には、家庭裁判所に申し立てをして
成年後見制度(法定後見)を利用することになります。

しかし、法定後見では

・家庭裁判所が後見人を選ぶ
・必ずしも配偶者が後見人になるとは限らない

という点があります。

行政書士としての提案

このようなケースでは、
任意後見契約を利用する方法があります。

任意後見とは、
将来判断能力が低下した場合に備えて、

あらかじめ後見人を決めておく制度です。

例えば、

夫・・・妻を任意後見人にする
妻・・・夫を任意後見人にする

という形で契約をしておけば、
どちらかの判断能力が低下した場合に、

配偶者が

・介護サービスの契約
・施設入所の手続き
・銀行手続き
・生活に必要な契約

などを行うことができるようになります。

また、将来のことを考えて、

配偶者のほかに

・信頼できる親族
・専門職

などを後見人候補として考えておくこともできます。

なぜ家族信託ではなく任意後見なのか

家族信託は、

財産の管理や承継を目的として利用される制度です。

一方、今回のようなケースでは、

・介護サービスの契約
・施設入所契約
・生活に関するさまざまな手続き

など、生活全体に関する判断や契約が必要になります。

こうした契約は、基本的に
成年後見人(任意後見人を含む)が行うことになります。

そのため、

・将来の生活全体のサポートを考えている
・配偶者が代わりに手続きを行えるようにしておきたい

という場合には、
任意後見制度が適していることが多いといえます。

まとめ

子どもがいない夫婦の場合、
将来の手続きを誰が行うのかという問題が出てくることがあります。

任意後見契約を利用することで、

・配偶者に将来の手続きを任せることができる
・判断能力が低下した場合に備えることができる

という安心につながります。

元気なうちに将来の備えをしておくことが、
安心して暮らすための大切なポイントになります。