【成年後見シリーズ第9回】任意後見契約を結んでもすぐ始まらない? ― 制度の仕組み

事例

Jさん(76歳)は、将来に備えて任意後見契約を結ぶことにしました。
子どもと相談し、長女に任意後見人をお願いすることにしました。

公証役場で任意後見契約を結び、
「これで将来の備えができた」と安心しました。

ところが後日、Jさんはふと疑問に思いました。

「任意後見契約を結んだら、すぐに後見が始まるのだろうか」

長女に銀行手続きを頼もうとしたところ、

「まだ任意後見は始まっていないので、今はできない」

と説明を受けたのです。

Jさんは、

「契約をしたのに、なぜすぐに始まらないのだろう」

と疑問を感じました。

問題になりやすいポイント

任意後見制度について、
多くの方が誤解している点があります。

それは、

任意後見契約を結んだだけでは、任意後見は始まらない

ということです。

任意後見契約は、

将来のための準備

です。

実際に任意後見が開始されるのは、

・本人の判断能力が低下したとき
・家庭裁判所に申立てが行われたとき
・任意後見監督人が選ばれたとき

です。

この時点で、
はじめて任意後見人が正式に活動を開始することになります。

そのため、

本人が元気なうちは、
任意後見人が自由に財産管理などを行うことはできません。

行政書士としての提案

任意後見制度を考える場合には、

制度の仕組みを理解したうえで準備することが大切です。

任意後見契約は、

「今すぐのサポート」

ではなく、

「将来の判断能力低下に備える制度」です。

そのため、

・元気なうちのサポート
・将来の任意後見

という形で、段階的に考えることが重要です。

例えば、

・見守り契約
・財産管理委任契約
・任意後見契約

などを組み合わせることで、

元気なうちから将来まで、
継続したサポートの仕組みを作ることができます。

なぜ家族信託ではなく任意後見なのか

家族信託では、契約後すぐに財産管理を始めることができるという特徴があります。

一方、任意後見制度は、判断能力が低下したときに開始される制度です。

そのため、

・介護サービスの契約
・施設入所契約
・生活に関するさまざまな契約

など、将来の生活全体を支える制度として
任意後見が利用されることが多くあります。

状況によっては、

・家族信託
・任意後見

を組み合わせて利用するケースもあります。

まとめ

任意後見契約は、

契約を結んだだけではすぐに始まる制度ではありません。

本人の判断能力が低下し、
家庭裁判所で任意後見監督人が選ばれたときに
任意後見が開始されます。

この仕組みを理解したうえで、

・見守り契約
・財産管理委任契約
・任意後見契約

などを組み合わせて準備しておくことで、
将来に向けた安心の仕組みを作ることができます。