【相続・遺言 第19回】デジタル遺言とは? ~今後の制度と注意点~
最近、「デジタル遺言」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
・パソコンで遺言を作れる?
・スマホのメモは有効?
・動画で残せば遺言になる?
・将来はオンラインで完結する?
こうした疑問を持つ方も多いと思います。
実際、現在の日本では、遺言制度のデジタル化に向けた法改正の議論が進んでいます。
今回は、
「デジタル遺言とは何か」
「現在の制度はどうなっているのか」
「今後どう変わる可能性があるのか」
について解説します。
1.そもそもデジタル遺言とは?
簡単にいうと、「電子データで作成・保管する遺言」のことです。
たとえば、
・パソコン
・スマートフォン
・タブレット
・クラウド
・動画
・音声
などを利用した遺言をイメージすると分かりやすいと思います。
2.現在の日本では認められている?
結論からいうと、
現在の日本では、完全なデジタル遺言は原則として認められていません。
3.現在有効な遺言方式
現在の民法では、主に次の3つがあります。
| 種類 | 特徴 |
| 自筆証書遺言 | 本人が手書き |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成 |
| 秘密証書遺言 | 内容を秘密にできる |
特に多いのは、
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
です。
4.なぜ手書きが必要なの?
現在の自筆証書遺言は、
・本人が書いたこと
・偽造ではないこと
・本人の意思であること
を確認するため、「全文自書」が原則になっています。
そのため、
・パソコンのみで作成
・スマホ入力のみ
・音声データだけ
・動画だけ
では、原則として有効な遺言になりません。
5.スマホのメモは遺言になる?
例えば
「全財産を妻に残す」
というスマホメモが見つかった場合。
現行法では正式な遺言として認められない可能性が高いです。
実際、動画や音声だけでは法的効力が認められないという点がよく話題になります。
6.では、なぜデジタル化が検討されているのか
理由は大きく3つあります。
① 高齢化社会への対応
高齢になると、
・手が震える
・長文を書けない
・外出が困難
というケースが増えます。
その結果、
「遺言を書きたくても書けない」
という問題が起こっています。
② 遺言作成のハードルが高い
現在の自筆証書遺言は、
・手書き必須
・形式ミスで無効
・保管に不安
など、一般の方には難しい面があります。
③ デジタル社会とのズレ
現在は、
・銀行
・行政手続
・契約
・確定申告
など、多くが電子化されています。
その中で、
「遺言だけ完全アナログ」
という状況に違和感が出てきているのです。
7.現在検討されている「デジタル遺言」
法制審議会では、
「保管証書遺言」
という新制度が検討されています。
これは簡単にいうと、
「電子作成+法務局保管」
を組み合わせた制度です。
8.どのような仕組み?
現在検討されている内容では、
・パソコンやスマホで作成
・法務局へ保管申請
・本人確認を実施
・対面またはウェブ会議で意思確認
などが想定されています。
9.押印も不要になる?
現在の議論では、押印廃止も検討されています。
これはかなり大きな変化です。
現在は押印漏れで遺言が無効になるケースもありますが、
制度が変われば作成しやすくなる可能性があります。
10.デジタル遺言のメリット
① 作成しやすい
パソコン入力であれば、
・修正が簡単
・読みやすい
・高齢者でも作りやすい
という利点があります。
② 保管紛失リスクが減る
法務局保管であれば、
・紛失
・改ざん
・勝手な破棄
などのリスクを減らせます。
③ 全国どこでも利用しやすい
オンライン化が進めば、
・遠方
・入院中
・施設入所中
でも利用しやすくなる可能性があります。
11.一方で問題点もある
便利になる一方で、課題もあります。
① なりすましリスク
電子データは、
・ID・パスワード盗用
・他人による入力
・AI音声
・AI動画
などの問題があります。
今後は本人確認の厳格化が重要になります。
② 本当に本人の意思か
高齢者の場合、
・強制
・誘導
・認知能力低下
などが問題になることがあります。
そのため、「誰が・どのように確認するか」が非常に重要になります。
③ データ消失リスク
電子データは、
・パスワード不明
・サービス終了
・端末故障
などの問題もあります。
「データだから安全」とは限りません。
12.今後はどうなる?
現在、法改正に向けた動きが進んでおり、
・パソコン作成
・オンライン手続
・押印廃止
などが現実化する可能性があります。
ただし、「完全自由なデジタル遺言」になるわけではありません。
特に、
・本人確認
・偽造防止
・強要防止
は極めて重要視されています。
13.現時点での注意点
「まだ制度化されていない」ということを認識しておくことです。
現在でも、
・ネット記事
・SNS
・AIサービス
などで、「スマホで遺言OK」のような誤解を招く情報があります。
しかし、現時点では、
法律上の要件を満たさなければ無効になる可能性があります。
14.今できる安全な方法
現時点で確実性を重視するなら、
公正証書遺言が最も安全性が高い方法です。
また、自筆証書遺言+法務局保管制度も利用が増えています。
15.まとめ
デジタル遺言は、
・高齢化
・社会のデジタル化
・相続手続の簡素化
に対応するため、今後大きく進んでいく可能性があります。
しかし一方で、
・偽造
・なりすまし
・強要
・本人確認
など、新たな課題もあります。
そのため、
「便利だから」だけではなく、「本当に安全か」
という視点も非常に重要です。
現時点では、正式な遺言として確実性を求めるなら、
・公正証書遺言
・法律に沿った自筆証書遺言
を基本に考えることが大切です。
