【成年後見シリーズ第7回】任意後見だけでは足りない? ― 財産管理委任契約との違い
事例
Hさん(77歳)は、現在も元気に生活しています。
子どもは2人いますが、どちらも遠方に住んでいます。
将来に備えて何か準備をしておきたいと考え、
任意後見制度について調べるようになりました。
「将来、認知症になったときのために任意後見契約を結んでおけば安心だろう」
そう考えて相談に来られました。
しかし、話を聞いていくと、Hさんにはもう一つ気になっていることがありました。
最近は銀行や役所の手続きが少し大変になってきており、
「元気なうちでも、手続きを家族に手伝ってもらえたら助かる」
と感じているのです。
問題になりやすいポイント
任意後見契約は、将来、判断能力が低下した場合に備える制度です。
そのため、
契約を結んだだけでは、
すぐに任意後見人が財産管理などを行うことはできません。
任意後見が開始されるのは、
・本人の判断能力が低下したとき
・家庭裁判所で任意後見監督人が選ばれたとき
です。
つまり、
本人が元気なうちは、任意後見人は活動できない
という点に注意が必要です。
そのため、
・銀行手続きを手伝ってほしい
・財産管理を任せたい
・役所の手続きをお願いしたい
といった「今のサポート」については、
任意後見だけでは対応できない場合があります。
行政書士としての提案
このような場合には、
財産管理委任契約を任意後見契約と組み合わせる方法
があります。
財産管理委任契約とは、
本人が元気なうちから、
・銀行手続き
・生活費の管理
・役所手続き
などを信頼できる人に任せる契約です。
例えば、
本人・・・Hさん
受任者・・・長男
という形で契約をしておけば、
長男がHさんの依頼に基づいて、
・銀行の手続き
・各種支払い
・財産管理
などをサポートすることができます。
そして、将来Hさんの判断能力が低下した場合には、
あらかじめ結んでおいた任意後見契約に基づいて、
任意後見人が正式に財産管理や契約手続きを行うことになります。
このように、
元気なうちのサポート → 財産管理委任契約
判断能力低下後のサポート → 任意後見契約
という形で備えることができます。
なぜ家族信託ではなく任意後見なのか
家族信託は、財産の管理や承継を目的とした制度です。
一方、今回のケースでは、
・日常的な銀行手続き
・生活費の管理
・将来の介護契約や施設契約
など、生活全体に関わる手続きが問題になります。
財産管理委任契約と任意後見契約を組み合わせることで、
・元気なうちの財産管理
・将来の契約手続きへの備え
の両方を準備することができます。
そのため、
生活全体のサポートを考える場合には、任意後見を中心とした仕組みが適している場合が多い
といえます。
まとめ
任意後見契約は、将来判断能力が低下した場合に備える制度です。
しかし、元気なうちの財産管理や手続きのサポートについては、
任意後見だけでは対応できない場合があります。
そのため、
・財産管理委任契約
・任意後見契約
を組み合わせて準備しておくことで、
より安心できる仕組みを作ることができます。
