【成年後見シリーズ第5回】認知症になる前の備え ― 任意後見契約という選択

事例

Fさん(76歳)は、現在は元気に一人で生活しています。
子どもは2人おり、それぞれ独立して家庭を持っています。

最近、テレビや新聞で「認知症」という言葉をよく目にするようになり、
自分の将来について少し不安を感じるようになりました。

特に気になっているのは、知人の体験です。

その知人は、認知症が進んでしまい、

・銀行の手続き
・介護サービスの契約
・施設入所の手続き

などが自分でできなくなりました。

その結果、家族が家庭裁判所に申し立てをして、
成年後見人が選ばれることになりました。

その話を聞いて、Fさんはこう考えるようになりました。

「自分も元気なうちに、将来の備えをしておいた方がよいのではないか」

問題になりやすいポイント

認知症になると、
契約の内容を理解して判断することが難しくなる場合があります。

そうなると、

・銀行手続き
・不動産の売却
・介護サービスの契約
・施設入所契約

などの重要な手続きを行うことができなくなります。

また、判断能力が低下した後では、

任意後見契約を結ぶことはできません。

その場合には、家庭裁判所に申し立てをして
成年後見制度(法定後見)を利用することになります。

しかし、法定後見では

・家庭裁判所が後見人を選ぶ
・自分で後見人を決めることができない

という点があります。

行政書士としての提案

このような場合には、元気なうちに任意後見契約を結んでおく方法があります。

任意後見とは、
将来判断能力が低下したときに備えて、

あらかじめ後見人を決めておく制度です。

例えば、

本人・・・Fさん

任意後見人・・・長男

という形で契約をしておけば、
将来判断能力が低下した場合に、

任意後見人が

・銀行手続き
・介護サービスの契約
・施設入所の手続き
・生活に関するさまざまな契約

などを本人に代わって行うことができるようになります。

任意後見契約は、
本人が元気なうちに公正証書で作成する必要があります。

そのため、将来の不安を感じた段階で準備を始めることが大切です。

なぜ家族信託ではなく任意後見なのか

家族信託は、財産の管理を目的として利用される制度です。

一方で、認知症になった場合には、

・介護サービスの契約
・施設入所契約
・生活に関するさまざまな手続き

など、生活全体に関わる判断や契約が必要になります。

こうした契約を行うことができるのは、
基本的には成年後見人(任意後見人を含む)です。

そのため、

・将来の生活全体のサポートを考えたい
・認知症になった場合の備えをしておきたい

という場合には、
任意後見制度が適しているケースが多いといえます。

まとめ

認知症への備えは、
早めに考えておくことが大切です。

任意後見契約を利用することで、

・信頼できる人を後見人として決めておく
・判断能力が低下したときの備えをしておく

ことができます。

将来の安心のために、
元気なうちから準備を始めておくことが重要です。