【親なきあと対策 第4回】 家族がいても安心とは限らない ~兄弟姉妹に頼りすぎないために考えておきたいこと~

「うちには兄弟姉妹がいるから大丈夫。」
親なきあとについてお話をしていると、このようなお言葉をいただくことがあります。
確かに、兄弟姉妹は障害のあるお子さんにとって、とても心強い存在です。
親御さんにとっても、「自分がいなくなった後は兄弟姉妹が支えてくれるだろう」という思いは、ごく自然なことです。
しかし、本当にそれだけで安心できるのでしょうか。
今回は、兄弟姉妹に頼ることの大切さと、その一方で考えておきたい現実についてお話しします。

兄弟姉妹にも、それぞれの人生があります

兄弟姉妹は、お子さんを大切に思っていることがほとんどです。
しかし、兄弟姉妹にもそれぞれの生活があります。
例えば、
・仕事が忙しい
・結婚して家庭を持っている
・子育てをしている
・遠方で暮らしている
・自身も病気や高齢になっている
こうした事情がある中で、親御さんと同じような支援を続けることは、決して簡単なことではありません。

「面倒を見たい気持ちはあるけれど、現実には難しい。」
そのようなケースは少なくありません。

兄弟姉妹に頼ることが悪いのではなく、「兄弟姉妹がいるから大丈夫」と考えてしまうことが、かえって将来の負担につながることがあります。

親御さんの想いと兄弟の理解の隔たり
親御さんの中には、
「その時になれば、兄が何とかしてくれる。」
「妹にお願いしてあるから大丈夫。」
と思われている方もいらっしゃいます。

しかし、実際に兄弟姉妹へ確認してみると、
「具体的に何をすればよいのか分からない。」
「親から詳しい話を聞いていない。」
「財産のことも制度のことも知らない。」
ということが少なくありません。
お互いに「そのうち話そう」と思っているうちに時間が過ぎ、いざという時に初めて困ってしまうのです。
親御さんの思いと、兄弟姉妹の理解には、意外と大きな差があることがあります。

「きょうだい児」の気持ちにも目を向けて

障害のある方の兄弟姉妹は、「きょうだい児」と呼ばれることがあります。
幼い頃から弟や妹、あるいは兄や姉を支え、親御さんの苦労を見ながら育ってきた方も少なくありません。
そのため、
「自分が支えなければならない。」
という責任感を強く持っている方もいます。
一方で、
「できる限り協力したいけれど、自分の家庭も大切にしたい。」
「将来のことを考えると、不安が大きい。」
という気持ちを抱えている方も多くいらっしゃいます。
どちらの思いも間違いではありません。
だからこそ、親御さんの希望を一方的に伝えるのではなく、お互いの気持ちを尊重しながら話し合うことが大切です。

財産だけを残せば安心ではありません

「兄弟姉妹に財産を多めに相続させれば、そのお金で面倒を見てもらえる。」
そのように考えられる方もいらっしゃいます。
しかし、お金を残すだけでは十分とはいえません。
例えば、
・どのような支援をお願いしたいのか
・毎月どの程度の援助を考えているのか
・医療や福祉サービスとの関わり方
・緊急時の対応方法
こうした内容が共有されていなければ、兄弟姉妹は戸惑ってしまいます。
また、「親から頼まれたから」という理由だけでは、長年にわたって支援を続けることが難しい場合もあります。
そのため、遺言書や親なきあとノートなどを活用しながら、親御さんの思いや支援の方法を具体的に残しておくことが大切です。

家族だけで支えようとしないことも大切

以前は、「家族が面倒を見るのが当たり前」という考え方が一般的でした。
しかし現在は、福祉制度も充実し、地域で支える仕組みが少しずつ整ってきています。
例えば、
・相談支援専門員
・グループホーム
・居宅介護や重度訪問介護
・日中活動している事業所
・成年後見制度
・地域の相談機関
こうした制度や支援者を活用することで、兄弟姉妹だけに負担が集中することを避けることができます。
家族だけで抱え込まず、「みんなで支える仕組み」を作ることが、これからの親なきあと対策には欠かせません。

今から家族で話し合っておきましょう

親なきあと対策で最も大切なのは、「家族で話し合うこと」です。
例えば、
・将来どのような生活を希望しているのか
・誰がどのような役割を担うのか
・財産をどのように残すのか
・困ったときは誰に相談するのか
こうしたことを一度話し合っておくだけでも、将来の不安は大きく変わります。
話し合いは、一度で結論を出す必要はありません。
家族全員が納得できる形を目指して、少しずつ進めていくことが大切です。

「支える人」を支える準備も必要です

親御さんは、お子さんの将来を心配されます。
しかし、そのお子さんを支える兄弟姉妹や親族にも、安心して支え続けられる環境が必要です。
制度や専門家、地域の支援を上手に活用し、「誰か一人が頑張る」のではなく、「みんなで支える」体制をつくることが、親なきあと対策の大きな目標といえるでしょう。

まとめ

兄弟姉妹は、障害のあるお子さんにとって、とても大切な存在です。
しかし、兄弟姉妹がいることと、将来の生活が安心であることは、必ずしも同じではありません。
親御さんが元気なうちに、ご家族で話し合い、制度や地域の支援も活用しながら、無理のない支援体制を整えていくことが大切です。
「家族だけで何とかする」のではなく、「家族と地域が一緒に支える」仕組みを考えることが、お子さんの安心した将来につながります。

次回予告
第5回「『親なきあとノート』を作る意味」
「もしものときに必要な情報を、誰が引き継ぐのか。」
その答えの一つが「親なきあとノート」です。
次回は、なぜ親なきあとノートが必要なのか、どのようなことを書いておけばよいのか、
そして実際にどのように活用されるのかについて、具体例を交えながらわかりやすく解説します。