【親なきあと対策 第3回】 障害のある子が将来困ることとは ~「生活できるだろうか」という不安を、一つずつ整理してみましょう~

前回は、「親なきあと対策は、親御さんが元気なうちから始めることが大切」であることをお伝えしました。
では、親御さんが支えられなくなったとき、お子さんは具体的にどのようなことで困るのでしょうか。
「漠然と不安はあるけれど、何が問題なのか整理できていない」という方も少なくありません。
そこで今回は、親御さんから実際によく聞かれる不安をもとに、将来起こりやすい課題について考えてみたいと思います。

① お金の管理は誰がするの?
 多くの親御さんが最初に心配されるのが、お金の管理です。
 障害年金や給与、工賃などの収入があっても
 ・毎月の生活費を管理できるだろうか
 ・家賃や公共料金をきちんと支払えるだろうか
 ・通帳やキャッシュカードをなくさないだろうか
 ・悪質な訪問販売や詐欺の被害に遭わないだろうか
 といった不安があります。
 また、親御さんがこれまで管理していた預金や財産を、将来どのように引き継ぐかも重要な課題です。
 遺言書や家族信託などを活用することで、安心につながる場合もあります。

② 住まいはどうするの?
 住まいについても、多くのご家庭が悩まれるテーマです。
 現在は親御さんと一緒に暮らしていても、将来は次のような選択が考えられます。
 ・グループホームで生活する
 ・一人暮らしを目指す
 ・入所施設を利用する
 ・兄弟姉妹など親族と暮らす
 どの方法がよいかは、お子さんの障害の状況や希望、ご家族の事情によって異なります。
 大切なのは、「その時に考えよう」とするのではなく、元気なうちから見学や情報収集を始めておくことです。
 特に人気のあるグループホームは、すぐに利用できない場合もあります。
 将来の選択肢を広げるためにも、早めの準備が大切です。

③ 医療や福祉サービスは継続できる?
 親御さんが手続きをしていた福祉サービスや医療機関とのやり取りも、大切な課題です。
 例えば、
 ・通院の付き添い
 ・薬の管理受給者証の更新
 ・福祉サービスの契約
 ・相談支援専門員との連絡
 これらを誰が引き継ぐのかを考えておく必要があります。

 特に、普段は親御さんがすべて対応しているご家庭では、急な入院などがあると、支援者が状況を把握できず困ってしまうこともあります。
 かかりつけ医や利用している福祉サービス、担当者の連絡先などをまとめておくことは、とても大切な準備の一つです。

④ 契約や手続きは誰が行うの?
 私たちの生活では、さまざまな契約や手続きが必要になります。
 例えば、
 ・福サービスの利用契約
 ・携帯電話の契約
 ・アパートの賃貸契約
 ・銀行での手続き
 ・入院や施設入所の手続き
 障害の状況によっては、ご本人だけで契約内容を理解し、判断することが難しい場合もあります。
 そのようなときには、成年後見制度などの利用を検討することもあります。
 制度を利用するかどうかは別として、「誰が支援するのか」を事前に考えておくことが重要です。

⑤ 相談できる人はいますか?
 親御さんは、お子さんにとって一番身近な相談相手です。
 しかし、その親御さんがいなくなったとき、お子さんは誰に相談できるでしょうか。
 例えば、
 ・困ったことがあったとき
 ・病気になったとき
 ・お金のことで悩んだとき
 ・福祉サービスについて相談したいとき
 頼れる人がいなければ、不安を一人で抱え込んでしまうこともあります。
 家族だけでなく、相談支援専門員、施設職員、地域包括支援センター、行政の相談窓口、そして必要に応じて行政書士をはじめとする専門家など、複数の相談先を確保しておくことが安心につながります。

⑥ 親しか知らないことがたくさんある
 親御さんが長年支えてきたお子さんの生活には、「親しか知らない情報」が数多くあります。
 例えば、
 ・好きな食べ物、苦手な食べ物
 ・パニックになりやすい場面
 ・落ち着く接し方
 ・毎日の生活リズム
 ・飲んでいる薬や服薬方法
 ・緊急時の対応方法
 こうした情報は、医療や福祉の専門職であっても、親御さんから教えてもらわなければ分からないことが少なくありません。
 だからこそ、「親なきあとノート」などを活用し、お子さんに関する情報を整理して残しておくことは、とても大きな意味があります。

一番大切なのは、「一人で抱え込まないこと」
 ここまでご紹介したように、親なきあとにはさまざまな課題があります。
 しかし、これらをすべて親御さん一人で解決しなければならないわけではありません。
 福祉制度や成年後見制度、遺言書、家族信託など、それぞれのご家庭に合った方法を組み合わせることで、不安を減らすことは十分可能です。
 また、相談支援専門員や福祉サービス事業者、行政、そして法律や相続の専門家と連携することで、お子さんを支える体制を整えることもできます。
 大切なのは、「何が心配なのか」を整理し、一つずつ準備を進めていくことです。

まとめ
 「親なきあと問題」は、一つの問題ではありません。
 お金、住まい、医療、福祉、契約、人とのつながりなど、日々の生活に関わるさまざまな課題が重なり合っています。
 だからこそ、早いうちから将来を見据え、少しずつ備えていくことが、お子さんの安心した暮らしにつながります。

 次回は、多くの親御さんが考える「兄弟姉妹がいるから大丈夫」という思いについて、本当にそう言い切れるのか、一緒に考えていきたいと思います。

次回予告
 第4回「家族がいても安心とは限らない ― 兄弟姉妹に頼りすぎないために」
 「きょうだいがいるから大丈夫」と考えていませんか。
 兄弟姉妹は心強い存在ですが、それぞれに仕事や家庭、健康などの事情があります。
 次回は、兄弟姉妹との  関わり方や、負担を一人に集中させないための準備について、わかりやすく解説します。